◆レナード ――「信念だとか秩序だとか馬鹿らしい。俺は俺とその周辺の幸せの為に戦うので精一杯なんだよ!」
主人公。現国王を父に持つ王子でありながら、母は庶民の出自、三二人目の妻。彼自身は王の二二番目の子、十番目の男子であるため、王都にその居場所を求められず、母の逝去と共に王都から追い立てられ、辺境の県の相(州の次官補、県の長官)などという卑職を捨扶持のように与えられた不遇の身ながら、自身はその生活の平和を享受し、また愛しんでいる。
現在は、世話役のシードルフ男爵邸に居候中。
レナードの世話役であるシードルフ男爵ギュンターの娘。レナード曰く「壁の中ではデキる女。壁の外ではまるで世間知らず」という生粋のお嬢様。事務処理の名人で、県の相としてのレナードの実質的な秘書のようなことをしている。通称、『シードルフの鬼姫』。白皙の美貌の持ち主で、今年で17になるが、「逆らえばグーでパンチが飛んでくる」キツい気性、人間を木から振り落とせるほどの怪力、そしてその評判故、教養のある名門貴族の子女としては珍しく、縁談がひとつもまとまらず、誰が彼女を射止めるかは、フォルゲン州に居る貴族たちのちょっとした話題になっている。
もっとも、本人はそれらを全く気にしていないのだが。
◆ギュンター――「主、主足らずんば、臣、臣たらず。諫言申し上げるのも臣下の務めというものです、殿下」
アルテナ県の相であるレナードの世話役。シードルフ男爵。娘にアリアが居る。数年前に妻に先立たれて現在は独身。カイゼル髭がダンディーな、「質実剛健」という言葉がそのままぴったりな武人。シードルフ「伯爵」家はかつて代々フォルゲン州の太守を務めていた家柄だったが、レナードの父が台頭してくるとギュンターは早々に恭順の意を示し、州民を虐げないことを条件に爵位を返上し、自ら太守の位を下り、アルテナ県都であるハーンに謹慎していた。3年前にレナードを世話役として引き取ったのは、新たに男爵位を賜った上で謹慎明け最初の勅命だったが故に断りきれなかった、という事情があったりする。
現在ではレナードを新たな主君と認め、心から忠誠を誓っている。
◆カシム――「いいか! 俺が今望むのは、貴様等の苦しむ姿を見ることだ!」
レナードが3年前に県の相としてハーンにやってきた際に直面した最優先かつ最も重要な課題は、県内の治安の向上であった。当時も県兵は居たが、当時の県兵はまるで農民に竹やりを持たせただけ、といった程度の、極めて鈍らな練度の集団であり、とても治安維持できるものではなかった。そこで、レナードは即効的な打開策として傭兵隊を組織し、これに治安維持をさせながら、また県兵の練度を上げる計画を立ち上げた。この時に集められた20人の傭兵たちのリーダーとして隊長に就任したのは、レナードと同年齢の少年だった。傭兵の両親から英才教育とも言うべき訓練を幼い頃から受けており、その戦闘能力は高い。
育った環境が環境であった所為か、殺気には敏感でも人の悪意や好意に鈍感な朴念仁であったりする。
◆カリーニ――「ボスは二人要らない。犬は選んだ主人にしか仕えぬものだ」
カシムと共に初期から傭兵隊に所属している、傭兵隊現副長である。優れたリーダーシップと広い視野でレナードとカシムを補佐している。そもそも、傭兵隊隊長にカシムを推薦し、就任するきっかけをお膳立てしたのは彼だったりした、という傭兵隊陰のドン。作戦立案やいざ戦闘という時には容赦のない性格をしているが、人間との接し方はさながら聖職者のようでもある。長年それなりに名の知れた傭兵生活である筈なのに、何故か宮廷のことなどにも詳しい「事情通」でもある。
◆リトミシェル――「よくある陳腐なセリフでも、実際に言われて見れば気分が良いものね?」
通称リト、或いはリト姉。異民族の出身。姉御肌で、燃え上がる灼熱の炎を思わせる紅い髪と豹の様に機能美に満ちたスタイルが印象的な美女。カシムたちと同時期に傭兵隊に入隊した『一期生』のひとりである。美少年&美少女好き、というまるでどこかの腐女子のような趣味を持っているが、基本的に信義に厚い性格の為、傭兵隊の人間には慕われている。傭兵隊初期メンバーの中では隠密任務を得意としたが、それ以外でも何でも大概なことはできてしまう、色々な意味でスーパーな人。
2つ年下の妹が居る。
ハーンにあるビストロ『シェーファーフント』の店主。元傭兵隊で『一期生』のひとりでもある。現在、カシム、カリーニ、リトを含めて傭兵隊に『一期生』は五人居るが、当初の二〇人から現在の人数に減ったのは、実にたった一度の戦闘によるものであり、彼はその時、鈍らだった県兵を救う為に足の腱を損ね、傭兵生活を引退して今の店を出した。ただし、その店に『シェーファーフント(訓練された犬)』と名づけるなど、まだ傭兵生活自体には未練があるようだ。もっとも、基本的に寡黙な性格なので、それと思わせることは無いのだが。
傭兵隊『一期生』のひとり。特殊な鉄弓を使う、弓の達人である。かつて、カシム、リト、ジャンの三人は『悪魔の三人組』と盗賊たちの間で噂になるほどだった。本人は軟派でお調子者だが、朴念仁のカシムの親友であり、またレナードの良き相談役でもある。
◆アトラシェル――「レナ兄ぃ、起きる。起きないと、おねーちゃんが来るよ?」
リトの妹。通称アト、またはアトラ。彼女自身は傭兵ではないが優れた弓の使い手で、ジャンに時々手ほどきをうけている。幾らかシスコン気味な部分があるが、同時にレナードとカシムを兄のように慕っている。傭兵隊詰所のマスコット的キャラクター。
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